[pp.56-67]
小松 潔 ((一財)日本エネルギー経済研究所)
テーマ: 投稿
カテゴリ: 研究論文
要旨:
2005年から欧州に導入された温室効果ガス(GHG)の排出量取引制度(EU ETS)は,その開始から4年以上経過したが,この中で,2006年,2008年にEU ETS規制対象施設に配分されるGHGの割当量(EUA)の取引価格が大きく乱高下したことが問題として指摘されている。本稿では,2005年から2009年までのEU ETSにおける価格変動要因を分析しながら,価格安定化のための措置について検討する。この結果,バンキングと長期的な排出削減目標の設定によってある程度の価格の維持に成功していたことが明らかになった。その一方で,余剰EUAについてはさらに対応が求められており,下限価格の設定,割当量の供給量の調整などが,今後の検討課題として残っている。
キーワード:
排出量取引制度,価格変動要因,安全弁,バンキング,ボロウィング,下限価格