[pp.121-126]
杉村 乾 (森林総合研究所)
要旨:
奄美大島では常緑広葉樹壮齢林の面積が急速に減少してきたため,今後の森林政策として4つの選択肢を特定し,その面積変化および希少鳥獣への影響を予測した。まず,(a)現状維持では,壮齢林面積がさらに半減し,最も大きな影響を受けるオオトラツグミの生息数は60%程度減少する。また,(b)公益的機能重視と(c)経済的管理では,常緑広葉樹壮齢林と鳥類の個体数は中程度に回復し,(d)国公有林禁伐では,常緑広葉樹壮齢林が1970年の約2倍に回復するのに呼応して鳥類の個体数も回復する。アマミノクロウサギに対する影響は,(a)~(c)では鳥類と同様であるのに対し,(d)ではパッチ状のハビタットを好むため回復後再び減少すると予測された。
キーワード:
希少鳥獣,生息環境,壮齢林,森林政策,奄美大島