[pp.69-74]
林健太郎,真田 純子,山田 和人,原沢 英夫,西岡 秀三 (バシフィックコンサルタンツ(株),国立環境研究所)
要旨:
日本全国を対象として,定常物質収支モデルにより酸性沈着物の臨界負荷量を推定した。解析には自然環境保全総合データベースなどを用いた。土壌鉱物の風化による塩基生成量の推定にあたっては,日本に広く分布する火山に含まれる火山ガラスや軽石を考慮した。その結果,既往の研究例に比べて高い臨界負荷量が推定され,風化による塩基生成量に依存した地域的な差が認められた。また,本研究の推定結果を日本における研究例と比軟し,土壌鉱物データや植生による塩基吸収データなどの充実,地形条件や土層厚に関するパラメータの検討,および火山灰の特性の把握などの課題を抽出した。その結果,日本の土壌や植生の特性を考慮した定常物質収支モデルの開発の必要性が明らかにされた。
キーワード:
臨界負荷量,酸性沈着物,定常物質収支モデル,自然環境保全総合データベース