[pp.277-282]
西村 武司 (滋賀大学環境総合研究センター)
要旨:
外来種であるセイヨウオオマルハナバチはトマト施設栽培の花粉媒介に不可欠な一方,外来生物法によって使用が規制される。本種の使用には,トマト生産者には施設へのネット展帳だけでなく,逃亡防止の努力が要求される。しかし,彼らの行動は観察不可能なため,非点源汚染の状況と類似したモラル・ハザード問題が生じる。北海道では,市民参加による本種のモニタリング活動が存在し,地域別の目撃・捕獲数が公開されている。本稿では,モニタリング活動がトマト生産者のモラル・ハザードを抑制する可能性について検討する。アンケート調査に基づいた分析の結果,この活動が連帯責任に基づいた心理的罰則を生産者に与え得ることを明らかにした。
キーワード:
モラル・ハザード,セイヨウオオマルハナバチ,モニタリング,非点源汚染,連帯責任,心理的罰則