[pp.237-242]
中村 洋 (法政大学)
要旨:
モンゴルで2009年から2010年にかけて自然災害“ゾド”が発生した。同国で最も家畜頭数が減少したドンドゴビ県で調査を行った結果,嵐が頭数を減少させる主要因であることが分かった。また,オトル(通常使う放牧地以外への畜群の移動)をしない,乾草を給飼できない世帯はゾド時に家畜頭数をより減少させていた。畜群の移動性の低い世帯は災害の影響を受けやすく,放牧地への圧力も高くなりやすい。以上から,移動性の低い世帯への政策として,乾草の備蓄を推進するよりも災害後に他の所得機会を与えるほうが,災害に強い社会と放牧地への圧力軽減を両立させられるのではないかと考えられた。
キーワード:
乾燥草原,遊牧,ゾド,気候変動,適応策,労働移動