[pp.73-78]
鈴木 哲也 (新潟大学)
要旨:
平成23年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し,マグニチュード9の地震規模により多くの貯水施設(ため池)が損傷を受けた。既存施設の戦略的保全管理を考慮した場合,東北地方太平洋沖地震により顕在化した損傷とその復旧過程を詳細に検討することは,今後の大規模地震災害における迅速な復旧に資するものであると考えられる。本研究では,農業用ため池の堤体部を対象に東北地方太平洋沖地震による損傷特徴を143ヶ所の既存施設の調査結果から考察した。特に甚大な損傷を受けた2ヶ所の施設については比抵抗電気探査と常時微動計測を用いて被災状況と復旧効果の定性評価を試みた。検討の結果,東北地方太平洋沖地震によりため池堤体は堤軸方向のひび割れが顕在化し,それらの可視化には比抵抗電気探査の有効が確認された。常時微動計測結果は,H/Vスペクトル比を用いることにより損傷と復旧効果の検証が可能であることが明らかになった。
キーワード:
東北地方太平洋沖地震,農業用ため池,常時微動計測,損傷,戦略的保全管理