[pp.67-72]
小川 直哉,加藤 和弘 (東京大学)
要旨:
パッチ状生息地を取り巻く空間は,動物の移動経路や,補助的な生息地として機能し得ると言われており,その状態が生息地内の鳥類相に影響するとされる。生息地を取り巻く空間を動物が利用ないし移動するには,生息地との境界を越える必要があるが,鳥類はそれを嫌うとの報告がある。本研究では,生息地の境界を越えて移動する鳥類の個体数と,境界外接部の土地被覆との関係を調べた。その結果,境界外接部における落葉樹は都市的環境を嫌う鳥類種の境界を越える移動を促進する可能性が示唆された。都市の樹林地の鳥類相を検討する際には,生息地の境界の状態が境界を越える鳥類の移動に影響し得ることに,注意を払うべきである。
キーワード:
都市緑地,鳥,境界,土地被覆,パッチ状生息地