[pp.401-406]
大原 有理 (京都大学)
要旨:
環境権を憲法に規定する議論が活発になっている。環境権を個人の権利として認めるか,国の義務規定とするかが争点となっている。本稿ではそうした議論の背景にある,市民が環境保全に積極的に関わることを可能にするには,環境権がどのように規定されることが望ましいか,という視点に立ち考察する。そのために環境権を望まれてきた背景を明らかにし,そのような要求が現在の法制度の中では実現困難な状況であることの理由を検討する。そして市民が具体的な権利として環境権を行使するためには,環境権が基本的人権として認められることに加えて,手続的権利として具体化されていく必要があることをオーフス条約の事例を元に明らかにする。
キーワード:
環境権,手続的権利,市民参加,持続可能な発展,オーフス条約