[pp.239-244]
雨宮 隆,松橋 隆治,吉田 好邦 ((株)テルム,東京大学)
要旨:
熱分解ガス化システムを用いたASRのリサイクル事業を対象に,割引キャッシュフロー(DCF)のモンテカルロシミュレーションとリアルオプション手法を用いて,投資意思決定のための事業性評価を行った。事業収益の不確実性要因であるスクラップ鉄,銅,アルミの市場販売価格の変動を幾何ブラウン運動で模擬し,毎年の利益期待値の累積現在価値Vのリアルオプション解析で算出した投資上限臨界値I *が投資の執行か延期かの判断閾値となる。2005年相当の金属価格を事業初期値とした事例では,I *がVより1割以上も低く,大きな初期投資が投じられにくい。投資を促進するためには,ASR処理委託費単価を20%程度高く設定することや,高い資源リサイクル率を実現することが効果的であることが示された。
キーワード:
リアルオプション,シュレダーダスト,自動車リサイクル,熱分解