[pp.131-136]
徳江 義宏,大澤 啓志,石川 幹子 (日本工営(株),日本大学,東京大学)
要旨:
都市域の谷戸の保全において,生息する個々の生物種の生息に関する知見の蓄積は重要である。本研究はクロマドボタル幼虫を対象に生息状況と環境要因の関係を把握した。夜間の発光個体数を基にした調査で季節変化と谷戸内の分布を把握し,また一般化線形モデルを用いて生息と環境要因の関係を解析した。結果,生息の把握には発光個体数の変動を考慮して複数回の調査が必要であることを示した。また谷戸の谷底部から尾根部にかけての広範な生息分布,林縁から樹林内にかけて林床植生が発達する環境の選好が明らかになった。雑木林の林床管理放棄は本種の生息空間増加に寄与する可能性もあり,生息状況を考慮した適切な管理が望まれる。
キーワード:
クロマドボタル(Pyrocoelia fumosa),谷戸,里山,林床植生