[pp.7-12]
井坂 暢也 (京都大学)
要旨:
国主導の森林環境政策における制度設計は産業支援の林業政策のままである。そして政策に基づく事業の評価は政策目的ではなく事業目標に対して実施され,環境影響は評価されない。また環境影響を科学的知見に基づきチェックする仕組みもない。しかし,森林環境税導入は地方自治体に森林環境政策への裁量を拡大させ,従来の行財政システムに縛られない環境政策を充実させ得る。特に滋賀県では,税制導入の際,議論の過程で政策課題が明確になり,森林に関する科学の不確実性に対処するため,順応的管理に準じるモニタリングとその結果のフィードバックの仕組みを事業に組み込むことができた。この仕組みは森林環境政策の有効性の確保に寄与し得る。
キーワード:
科学的知見,行財政システム,科学の不確実性,順応的管理,環境政策の有効性