[pp.43-48]
桑名 謹三 (環境自治体会議)
要旨:
賠償資力不足が企業の注意水準に与える影響に関するこれまでの研究においては,企業の生産活動が固定されたモデルが用いられている。しかしながら,企業は生産活動を調整することが可能である。また,裁判においては,先行研究において定式化された注意水準が過失認定基準となっているとはいいがたい。さらに,先行研究においては,現実味のある確率・損害額関数の特定化ができないため,数値解析は用いられていない。そこで,本研究においては,注意水準を適切に設定することによって,企業の生産活動をも考慮した分析を数値的に行った。その結果,企業の賠償資力不足の問題は,過失責任の場合であっても深刻であることがわかった。
キーワード:
賠償資力不足,注意水準,生産活動,法と経済学