[pp.171-176]
高田 英里,加我 宏之,下村 泰彦,増田 昇 ((株)建設技術研究所,大阪府立大学)
要旨:
近年,温泉街の衰退化に伴い,温泉街の景観における地域の固有性や,「ゆっくりと滞在できる」空間としての魅力性を回復すべく「環境活用型の滞在空間」が求められている。湯治の円熟期といわれ長期滞在が一般化していた江戸期中期から末期の温泉地では,源泉を中心として地形構造や生活様式に応答した地域固有の空間構造が成立していた。そこで城崎・有馬温泉地を事例として,空間イメージを規定する概念である「中心性」,「方向性」,「領域性」の3つの視点から両温泉地の空間構造を把握・比較考察を行った。その結果両温泉地の空間特性は,地系・水系構造上の立地特性及び社会的背景に基づく空間構成要素の違いにおいて,特に「中心性」と「方向性」に深く関わっていることがわかった。
キーワード:
温泉街,空間構造,地形構造,中心性,方向性,領域性