[pp.297-302]
篠村 善徳,穴澤 活郎,佐藤 正勝 (コミュニティー・アシスト・システム,鹿児島大学,美郷ほたる館)
要旨:
ホタルの里として知られる徳島県美郷地区では,地区内の2水系においてゲンジボタルの生息分布が大きく異なる。そこで本研究では,これらの水系における河川の化学的環境の相違に着目し,ホタルの生息分布と河川水質・底質との関係を考察した。その結果,ホタルの飛翔が観察されない水系では,エサとなるミスジカワニナの生息が確認されなかった。この水系の上流域では鉱山廃水の流入が見られ,下流域にわたって高濃度の重金属が底質中から検出された。もう一方の水系では,家庭排水による汚染が確認されたにもかかわらず,ゲンジボタルの飛翔が数多く認められた。このことから,ゲンジボタルは重金属汚染には極めて影響を受けやすい一方で,生活系の排水にはある程度の抵抗性があることが判明した。このように本研究により,河川の化学的環境が規定するホタルの生息条件に対して,一つの示唆を与えることができた。
キーワード:
ホタル,河川の化学的環境,水質,重金属,生息分布,美郷