[pp.341-346]
大澤 啓志,勝野 武彦 (日本文理大学,日本大学)
要旨:
稀少植物トウゴクヘラオモダカの種子発芽特性および谷戸におけるその保全管理手法について調査・考察した。最も高い発芽率が得られたのは低温湿潤処理の30°C明暗反復条件であり,これに対し低温湿潤処理を施さない種子の発芽率は極めて低かった。この種子発芽特性は谷戸奥の湧水地付近の過湿地という本種の生育立地環境によく対応するものであった。また異なる攪乱強度による成立植生の調査では,約30cmの耕起を行った地点のみ本種の生育が確認された。表層攪乱だけではミゾソバの繁茂は抑制されず,本種の生育にはミゾソバの繁茂を抑える意味で春季の耕起が有効と考えられる。
キーワード:
トウゴクヘラオモダカ,絶滅危惧植物,種子発芽特性,植生管理,谷戸