[pp.311-316]
河田 幸視 (京都大学)
要旨:
わが国でも科学的な野生生物管理が実施されつつある。特に,資源数が増加,減少している生物や,人との軋轢が生じる生物の管理が注目されている。本稿では,捕食者-被食者の関係にあり,被食者は経済的価値を有し市場で売買されるが,捕食者は価格がつかず農林水産業で被害を起こしているケースを取り上げる。理論モデルを構築し,数値シミュレーションをおこなった結果,(1)被食者の個体数が低い時の価格の増加が急激な場合には,生産者が収益を最大化しようとする結果,深刻な資源枯渇に陥りうる,(2)資源保護の観点からは,被食者を一定以上維持することで捕食者も保護される,(3)資源保護は消費者余剰の増大と整合的である,ということが示された。
キーワード:
害獣,捕食-被食関係,最適資源管理,数値シミュレーション