[pp.167-172]
林 希一郎 ((株)三菱総合研究所)
要旨:
1992年に採択された生物多様性条約の最も議論の多い課題は,第3の目的である「遺伝資源へのアクセスと遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)」である。本研究では,ABS契約で果たす利害関係者の役割と配分される利益の関係を明ら かにすることを目的に,13のABS事例を比較分析した。この結果,個々の利害関係者の役割などの要因が利益配分メカニズムに影響を及ぼすことが判明した。すなわち,利害関係者はABS契約の中で果たす独自の役割があり,それに応じて受け取る利益に概ねの傾向があると思われることが判明した。
キーワード:
生物多様性条約,利益配分,遺伝資源,ABS