[pp.165-170]
宮本 克己 (東京大学)
要旨:
マリブ・サンタモニカ沿岸山岳地域における1920年代に開発された別荘開発地は敷地が小規模で下水・道路などの基盤整備に欠け,これら小敷地のさらなる再分割による建築は環境上問題視され,1979年開発権移転制度(TDCs)が導人された。これは,新たな敷地分割を伴う開発に対して,既基盤低水準敷地分割地からTDCsを購人することを義務づけることで開発を抑制する一方,開発権を譲渡した敷地には地役権を設定し開発行為を放棄させることで自然資源環境を保全するというプログラムである。TDCプログラムにおける送り地は基盤低水準敷地分割開発地と自然資源保全地喊,受け取り地は既開発地域とされた。また,宅地需要が増大するに伴うTDCに対する需要と供給を調整するために基金,トラストを設立している。しかし,現在,相次ぐ自治体の誕生を迎え,これまで州法に基づく州委員会のガイドラインに規定されていたTDCプログラムに関する諸制度も,自治体による地域レベルの沿岸計画(LCP)が確定されるとともに自治体条例に規定される方向にあり,それにともないより精緻化された規定の策定が行なわれている。
キーワード:
開発権移転,マリブ市,カリフォルニア沿岸法,宅地分割開発,土地利用,敷地