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長谷川 渚,谷川 寛樹 (和歌山大学)
要旨:
維持管理作業が行われていない人工林は,木材生産能力が落ちるだけでなく,気象変動に対する抵抗力が小さくなり,二酸化炭素固定能力や水源涵養機能といった,森林の有する様々な機能が失われることになる。本研究では,広範囲を観測でき,かつ可視域以外からの情報も判読可能な衛星データを用い,森林ストック推計システムを構築することを目的とする。ケーススタディ対象地域を,和歌山県紀南地方,印南町付近の森林とした。現地調査から森林健全地域,枯死地域を特定し,衛星データを用いて比較を行い,それぞれの特性を定量化した。森林枯死地域については枯死率別に3分類し,それぞれの針葉樹面積を推計し,森林ストック量を推計した。その結果,健全地域の面積は全針葉樹面積の52%,枯死地域の面積は全針葉樹面積の軽度枯損が11%,中度枯損が29%,重度枯損が8%であることが明らかになった。活性度別森林ストック量は,全針葉樹1,399,000m3のうち,健全地域が1,033,000m3,軽度枯損が77,000m3,中度枯損が220,000m3,重度枯損が69,000m3であることが明らかになった。
キーワード:
:LANDSAT/TM,森林管理システム,針葉樹林,NDVI