[pp.273-278]
石井 裕一,村上 和仁,瀧 和夫,立本 英機 (千葉工業大学,千葉大学)
要旨:
東京湾奥部に位置する干潟における物質循環について,マイクロコズムを用いて,生物種間相互作用に着目して検討を行った。その結果,NH4-N循環に関しては,緑藻類であるUlva pertusaが非常に大きな影響を与えており,その場のNH4-N濃度に関わらず,NH4-Nを吸収しており,多種生物と共存することで,より高い浄化能をしめし,また,PO4-P循環に関しでは,環形動物であるNeanthesjaponicaがきわめて大きな影響を及ぼしており,自身あるいは分泌した体液と堆積物粒子への吸着によりPO4-Pを水中から除去しているものと考えられた。干潟における物質循環には異なる生物が異なる機能を発揮して関与しており,エコテクノロジーに代表されるように,干潟を水質浄化の場として捉えるならば,干潟に生息する生物種の多様性を高く維持することはきわめて重要であることが明らかとなった。
キーワード:
マイクロゴズム,物質循環,生物種間相互作用,干潟生態系