[pp.249-254]
成田 健一 (日本工業大学)
要旨:
都市化によるヒートアイランド形成要因の一つである長波放射場の変化の実態把握を目的として,東京とその周辺域を対象に下向き長波放射量の移動観測を実施した。精密赤外放射計2台を使用し,1台を自動車のルーフに固定して移動観測に使用し,もう1台は固定点においてバックグラウンドの変化を記録した。観測は,都市域と郊外との差異の把握を目的としたマクロな都市域縦横断移動観測と,建物による遮蔽の効果を主眼とした新宿駅周辺のミクロな移動観測の2種類を実施した。その結果,都心と郊外の差異や街路の建て込み状態の違いによる差異など十分に把握しうることが確認でき,局所的な分布の差異は最大で約70W/m2に達していること,その変化はおおむね天空率の違いで説明できることなどが明らかとなった。
キーワード:
都市気候,街路空間,放射冷却,長波放射,天空率,熱収支