[pp.209-214]
中山 正典 (愛知大学)
要旨:
林業振興地における森林環境の変化と野生哺乳類による食害との関係を,静岡県佐久間町をフィールドに選び検討した。林業振興地では既に明治期に人工造林地が多くを占め,その後の造林活動も安定的に積極的に営まれてきた。この林業振興地でも,食害は起こっており,その原因は,1つに狩猟圧が減じたこと,2つには周辺の拡大造林急増地で増殖したカモシカ,シカが移入したことであった。第2次世界大戦後,人工造林地急増地と比較すると,林業振興地においては,被害はあるものの,縁辺部の小規模被害に限定されている。比較的被害が抑えられているのは,長期間,森林と人間と動物との関係が安定して推移してきたことにある。
キーワード:
林業振興地,静岡県磐田郡佐久間町,ニホンカモシカ,ニホンジカ,森林環境,林業被害