[pp.95-100]
田原 直樹,上甫木昭春,澤木 昌典 (姫路工業大学,大阪府立大学,大阪大学)
要旨:
本研究は,江戸時代中期に出版された名所図会の一つである『摂津名所図会』の挿絵に描かれた樹木に着目し,名所およびその空間に占める位置づけをあきらかにすることによって,当時の樹木観を考察する材料を提供しようとしたものである。その結果,名所およびその空間を成立させる要素として,樹木はそれ自体のタイプとして確固とした位置をもつと同時に,名所空間の修景や意味の付加など複合的役割をもつことがわかった。また,樹木は,名所図会の挿絵にとって,表現の対象というだけではなく,表現のツールでもあるという多彩な役割を果たしており,その結果,挿絵はさまざまな樹木表現を駆使した図像であるともいえるだろう。
キーワード:
名所図会,名所,樹木観,名木観,摂津(大坂)