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根岸 由紀,糸長 浩司,河野 英一 (まちづくりコンサルタント コモンズ,日本大学)
要旨:
本稿の目的は都市近郊農村集落において,集落空間および宅地空間で水利環境と水利用の実態分析を通じて,近代化の中で生じた水を介するコモンズ性の変容を明らかにすることである。調査対象地は西ジャワ・バンドン市近郊農村集落において,伝統的な水利用空間が残っているカンプンと織物工場の進出によって変化した水利用空間を持つカンプンを選択した。私的所有化が押し進められていく近代化の影響として,「囲む水利用空間」の利用関係はコモンズ的関係から協的関係へ,さらに世帯的関係に変容した。この協的関係は,伝統的なコモンズが近代化の過程で創出された新しいタイプのコモンズ性として位置づけられる。水利環境との関係は水系と直接的関係性がなくなり,水利用空間の閉鎖性を高めた。
キーワード:
農村集落,宅地空間,水利環境,コモンズ性,バンドン