[pp.165-168]
大塚 生美,糸長 浩司,趙 賢一,斉藤 一雄 (筑波大学,日本大学,愛植物設計事務所)
要旨:
本研究は,土地利用の有機的な安定性の維持を目指し,沢水系の土地利用が温存されている中山間集落を事例地として水系と水利用,水源である裏山の構造と集水域の住民意識(裏山の「水観」)を明らかにした。研究方法は,主に現地確認調査とヒアリング調査による。結果として,水路網は,堰を中心とする多様な水分けのしくみを持ち,幹線用水路から屋敷を巡って農地に至る梯子構造によって有機的に結合していること,幹線用水路は下流域に至る過程で裏山の各沢水により水量を確保していること,管理は,集落で選出される堰頭の制度が継承されていること,裏山の所有構造は,自由林と呼ばれる個人管理の共有財産によって占められること,裏山の「水観」としては,裏山から農地を含む居住地まで一体的な所有意識が残るー方で,水の受益者として集水域である裏山の利用を通じた管理の意識は低下していることなどがわかった。
キーワード:
地域環境計画,中山間集落環境,地域資源,水環境系,裏山,水観