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矢内 秋生 (武蔵野女子大学)
要旨:
目本海の自然現象に関する伝承的呼称調査から,韓国の漁村地域における風土的な環境観の特徴をまとめた。その結果,韓国漁村の人々が聴覚,嗅覚,平衡感覚,皮膚感覚,時間の移ろい感など,全ての知覚機能を総動員して自然を観察しようとする例が見出された。日本の漁民もかつてこの観察方法をしばしば駆使していた(矢内,1995)。現在では生活の知恵としての宏観的観察の手法は科学的測定に比べて精度が低いため,重視されない。しかし韓国の漁村では,宏観的に自然現象を理解する手法が風土的な環境観として豊富に存在する。このような自然認識は環境文化を形成する重要な一要素である。
キーワード:
環境観,韓国語,伝承的呼称,環境文化,宏観的観察