[pp.95-100]
上條 雄喜,千賀裕太郎 (東京農工大学)
要旨:
近年見られる有機性廃物の処分,放置,廃棄といった状況は,省資源という観点から見ても,また地下水汚染や悪臭公害,土壌汚染などの環境問題を引き起こす可能性が高いということからもその対策が求められている。このような問題意識のもと,本論では有機性廃物の地域内循環の要をなす堆肥センターの経営収支の状況を,5地区のデータから把握し,その分析を通して費用と関係する項目,費用に対する収益のカバー率,堆肥価格の決定機構を考察した。その結果,1)地区(原料・運営主体など)によって経営収支の記入方式が異なり,利益の獲得を視野に入れている地区と,廃棄物処理という側面が強い地区とが存在していること,2)生ごみを原料としている地区では,費用に対する収益のカバー率が非常に小さいが,生ごみの焼却費用を堆肥センターの収益に組み入れられるとすれば,収支は大きく改善すると考えることができること,また,3)堆肥の販売価格は,品質が十分に評価されていない地域内の堆肥の流通価格を参考に決定されているが,地区により大きなばらつきがあること,などが明らかになった。
キーワード:
地下水汚染,悪臭公害,有機性廃物,堆肥センター,経営収支分析