[pp.56-65]
藤稿 亜矢子 (東京大学)
テーマ: 投稿
カテゴリ: 報告
要旨:
ここ10 年来,ソーシャルキャピタル(以下SC)という言葉はさまざまな分野で目にするようになったが,SC の適用が多様化するに従ってこの概念のあいまいさが増長している。そこで本研究では,既往研究を分析しながらSC 概念の定義と問題点を総括した。レビュー結果から,90 年代後半からの広義による解釈および,SC の生成要素とSC の影響による結果を混同した定義づけが,因果関係分析の理論的背景を弱めていることが示唆された。今後,SC 概念の論理性を保つためにも,個々のSC 研究において,①文脈限定的かつ明確な定義のもとにこの概念を導入すること,②調査設計のさいに,SC の貯蓄と循環のプロセスを明確にするフレームワークを用いることが望まれる。
キーワード:
ソーシャルキャピタル,生成要素と結果,理論的背景