[pp.43-48]
辰己 賢一 (東京農工大学)
要旨:
愛媛県松山市にある1圃場を対象とし,地域単位で推計可能な作物収量算定モデルの開発を行い,気候変動が水稲の収量や水収支に与える影響を評価した。その結果,1) 将来の夏季における降水量の大幅な減少に伴い,灌漑に必要な水量が増加する。2) 将来,水ストレスの増加に伴い気孔開度が低下し,葉面からの蒸散量が減少するが,CO2濃度の増加に伴い光合成が促進され,水生産性が増加し,その結果,熱・水ストレスによる減収効果を増収効果が上回る。3) 将来気候下で移植日を現在より約1か月程度早めると,収量を維持しながら水資源を有効に利用することができる,以上3点が本研究で明らかとなった。
キーワード:
気候変動,水稲,圃場,作物収量算定モデル,統計的ダウンスケーリング