[pp.95-100]
佐藤 孝則 (天理大学おやさと研究所)
要旨:
『淮南子』は紀元前2世紀に編纂された百科全書であり,21篇から成っている。この中には,当時の自然観と感性,それに生態学的知識が紹介されている。そのうちの12篇の中に1790例の生物学的用語の使用が確かめられ,それらは9つのカテゴリーに分けられた。すなわち,哺乳類,鳥類,爬虫両生類,魚類,陸棲無脊椎動物,水棲無脊椎動物,木本類,草本類,そして鮮苔類である。そして,これらは,それぞれ31.2%,13.0%,7.5%,3.9%,8.8%,0.9%,22.1%,12.5%,0.1%の割合を占めた。当時の中国人は自然現象や四季の変化を感じとる豊かな感性と,動物の習性と人間の生業との関わりに深い見識を持っていた。これらは,当時の中国人が鳥獣や植物に強い関心を持ち,彼らと動物たちが多様な自然環境の中で共存していたことを示唆している。
キーワード:
淮南子,自然観,老荘思想,生態学的解析,自然保護