[pp.307-312]
中山 正典 (愛知大学)
要旨:
平成9年度の静岡県の林業統計によると,野生哺乳動物による林業被害は246haにも及び,これらの中でも被害面積,被害額ともに最も多かったのがカモシカによるものであった。静岡県水窪町をフィールドに選び,戦後の森林環境の変化とカモシカの食害との関係を検討した結果,以下のような食害発生のメカニズムが明らかになった。国によるカモシカの法律的保護→高度経済成長期の大規模森林伐採→格好の餌場となった伐採地へのカモシカの侵入→本来の生息地でなかった森林へのカモシカの移動→入ってきたカモシカが年々広域の伐採が継続される人工林地域で数を増やし,食害を発生させた。
キーワード:
ニホンカモシカ,林業被害,森林環境,拡大造林,幼齢造林地