[pp.243-248]
大澤 啓志,勝野 武彦 (日本大学)
要旨:
芭蕉の句にみられるよう,かつては寺院の池はカエル類の重要な生息空間であった。今日,都市近郊のカエル類の減少は著しいものがあるため,鎌倉周辺地区の寺院池等28地点でカエル類の生息状況を調査した。その結果,約半数の14地点でのみカエル類の生息がみられ,同地区の寺院池のビオトープ機能は低くなっていた。池の状態との対応を数量化II類で解析したところ,水際の形状,安定水域の有無,コイの密度等がガエル類の生息に関与していた。特に水際の形状は有意(P<0.01)な関係がみられ,今後の池整備において注意が必要とされる。寺院池が孤立した形ではカエル類の生息は少なく,水田等の農村的な環境と組み合わさって「古池とカエル」の結びつきが保たれるものと考えられる。
キーワード:
カエル,寺院池,地域資源,文化的共通感覚