[pp.165-170]
矢内 秋生 (武蔵野女子大学)
要旨:
韓国の東部沿岸地城を地形の特徴によって三つに区分し,伝承されている風の呼称を考察した。その結果,南よりの風は全般的に南の古語「麻(マ)」を用いて,マバラムと呼ばれているが,東南地域ではカルバラムが使われていた。日本海から吹く北風に関しては,セバラムが広く各地に分布している。また,ハヌバラムという北西の季節風は,各地の地形と密接に関係しており,この風は調査地域全体で風向を把握することができない。つまりハヌバラムは,風土性を持つ風であり,この風は地域固有の風土的環境観を形成する代表的な風である。さらに,地域別では,迎日湾地域は他の地域に比べると風の包括的な理解が困難な場所である。したがって迎日湾地域では,地理的条件が独特の風土的環境観を形成しているといえる。
キーワード:
環境観,韓国東部漁村,伝承的呼称,風の呼称,環境文化