[pp.133-136]
増島 博 (東京農業大学)
要旨:
霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画は第1期(1986-1990)及び第2期(1991-1995)をすでに終了し,現在第3期計画が開始されている。これと別に霞ヶ浦富栄養化防止基本計画(1992-2000)がある。これらの計画における目標水質に対して,第2期終了の1995年における水質はいずれも計画を達成していない。霞ヶ浦の流域(集水域)は標高40m以下の台地と低地が大部分で,耕地率は約39%である。また,霞ヶ浦流域は全国的にみて畜産の盛んな地域であり,約25万頭の豚と4万頭の牛が飼養されており,全窒素発生負荷量では流域人口90万人分をこえる量である。霞ヶ浦では農畜産系の負荷の削滅が水質改善のキーポイントとなる。しかし,現状の流域農業では,化学肥料重点の施肥体系が採用されており,家畜ふん尿の農業利用による負荷削減は十分な効果をあげていない。ここでは,家畜ふん尿の農業利用と畑地からの浸透水を水田で脱窒処理する対策をとった場合の窒素の負荷削減効果を検討し,具体的な農業面源対策を提案した。
キーワード:
湖沼水質保全,面源,家畜ふん尿,水田の脱窒機能