[pp.31-36]
大黒 俊哉,根本 正之 (農業環境技術研究所)
要旨:
過放牧による砂漠化が間題となっている中国東部半乾燥地域の砂地草原において放牧試験を実施し,緬羊の過放牧にともなう植生退行過程を地形条件との関連から検討した。本試験の結果,平坦部では6頭/ha程度の放牧圧によりバイオマスが急激に減少するとともに一年生植物が相対的に増加し,流動砂丘化の危険性が高まることが示唆された。また起伏量・比高の大きい地点では4頭/ha程度の放牧圧でも土壌表面の撹乱によって裸地化がはじまることがわかった。このように,放牧圧の増加にともなう植生退行のプロセスは,平坦部と起伏量・比高の大きい地点で異なり,それらはバイオマス減少および種組成変化のパターンの両面から把握できることが明らかになった。
キーワード:
砂地草原,過放牧,植生退行,放牧試験,微地形条件