ceis(一般社団法人 環境情報科学センター)  
  欧州の環境への取組み―事務局滝本の目― 2012年5月 第4号























































































土地の表面タイプと
重み係数















































































豊富な緑に囲まれた
住宅街









































































徹底したStormwater
管理――街の至るところに開水面











第4号では、第2号で扱ったテーマ「ベルリンBAF制度」、第3号テーマ「Green Factor」についての最新情報ならびに、ベルリンおよび第3号紹介事例②のスウェーデン・マルメ市のBo01地域について、双方を訪ねて参りましたので、その様子をいくつかの写真と共に紹介いたします。どうぞ、お付き合いください。


ベルリンBAF制度最新情報(第2号)

第2号でベルリンのBAF制度を紹介しましたが、ドイツでは、保守政権に変わった2005年頃から、環境政策に積極的でなくなったため、BAF制度への理解も減り、あまりうまく進んでいないという情報もありました。しかし、2011年8月現在、BAF制度導入地区はむしろ増えており、徐々にではありますが、確実に進行しているということがわかりました(下図、表参照)。

 図 BAF制度施行区域(2011年8月現在)
(茶色:導入中、オレンジ色:施行済み、緑:BAFなしのランドスケープ計画実施地)

 表 BAF制度導入地区(2011年8月現在)
 地区 No. 場所名  進行状況 
Mitte  I-L-1 Rosenthaler Vorstadt, Vor den Toren 施行
 I-L-2 Spandauer Vorstadt 施行
 II-L-10 Moabit 施行
 II-L-11 Tiergarten Süd 施行
 III-L-1 Schulstraße 関係機関による協議中
 III-L-2 Panke Nord 関係機関による協議中
 III-L-3 Panke Mitte 関係機関による協議中
 III-L-4 Panke Süd 関係機関による協議中
Friedrichshain-
Kreuzberg   
 V-L-2 Frankfurter Allee-Süd 施行
 V-L-3 Frankfurter Allee-Nord 関係機関による協議中
 V-L-4 Petersburger Straße 関係機関による協議中
 V-L-5 Stralauer Kiez 住民参加の初期段階 
Pankow IV-L-3  Gründerzeitgebiete Prenzlauer Berg 施行
Charlottenburg-
Wilmersdorf  
VII-L-5 Charlottenburger Innenstadt (BFF) 施行
IX-L-5 Wilmersdorfer Innenstadtbereich 関係機関による協議中
4-L-1 Nördl. Innenstadtbereich im Ortsteil Charlottenburg 関係機関による協議中
Strglitz-
Zehlenforf
XII-L-6 Steglitz-Zentrum 施行
Tempelhof-
Schöneberg      
VI-L-1b Tempelhofer Vorstadt 住民参加の初期段階
VIII-L-3 Tempelhof Nord 施行
7-L-1 Motzener Straße 施行
7-L-2 Großbeerenstraße 施行
7-L-3 Schöneberg-Mitte 通知
7-L-4 Schöneberger Insel  通知
7-L-5 Schöneberg-Nord 通知
Neukölln XIV-L-6 Mittelbereich Neukölln I 通知 

 (図・表とも、出典:Senate Department for Urban Development and the Environment, Unterscheidung zwischen L-Plänen und BFF-L-Plänen [独語ページにのみ掲載])

現状はこのようになっていますが、制度のしくみについて、前回ご紹介した際、BAF制度における重み係数や値について、どのように決められたのかという情報は不充分でした。今回は、この表面タイプと重み係数について、どのように決定されたのか、ご紹介します。
表面タイプによる重み係数を決定する際の判断基準は下記の事項です。

・蒸発散能力の高さ
 植物や土の上での高蒸発率の結果、高い蒸発効率が生じ、結果、湿気をもたらし、クールダウン効果が上昇する。

・ダストを収集する容量
 大気汚染は、植生によって最小化することができる。例えば、ダストは葉の表面に取り込まれるので、この容量が大きいと、空気の汚染を防ぐことができるため、植生面の効果は特に高い。

・雨水の浸透能力と貯水
 浸透率が高いと、雨水は直接下水道に流出しないため、それは結果として、地下水涵養となったり、土に蓄えられたりして、長期に渡って、植物に水分を供給する。それが結果として、蒸発散能力に良い影響を与える。

・土地機能の保全と向上の長期に渡る保証
 被覆面を少なくすることで、汚染物質のフィルタリング(濾過)、バッファー(緩衝)、移動などの土地機能を保つ。

・動植物の生息場所としての有用性
 ビオトープの質や緑量では、明確な違いを設けていない。決定要因は、動植物の生息地として利用可能かどうかだけである。

以上の考え方が基になって重み係数が決められていますが、それぞれの重み係数の数値の設定は、経験に基づいてなされたとのことです(ベルリン市州Senate Department for Urban Development and the Environment担当者の回答より)。

このように、進められてきているBAF制度ですが、実際にベルリンの地を訪れると、実感として、緑が豊かという印象を受けました。本コラム発行の約1か月前(2012年4月下旬)に撮影した現在のベルリン市街の様子です。
第2号では、ヨーロッパの都市にみられるような緑として、「公園などの緑地を整備した公共空間だけでなく、個人宅にも小さなかたまりでも緑があり、それが、その敷地外の人にも(公の道路や広場から見ることができるという事も含めて)利用でき、かつそれが連続していくことで、街全体に至るところに緑がある」と述べましたが、その様子が写真からわかります。文章ではなく、写真をみていただくことで、実際、どのような印象なのか、また私たちが日本で見ている街の緑の様子とどう違うのか、または同じようなところがあるのか、「都市にもとめられている緑のかたち」を考えるきっかけとなれば幸いです。
第2号でも紹介しました、ベルリンの中心にある、Mitte区の様子(地下鉄駅の周辺)。教会の周辺に多かったのですが、高い頻度で街中に木陰で休憩できるスポットが整備されていました。緑の量もかなり豊富でした。
街を歩いていると、同じようなスポットにめぐりつきます。下から見上げると隙間なく葉で覆われている印象です。

第2号で紹介したベルリン市街地の写真(図2)がありましたが、中心部より地下鉄で20分程度離れた住宅街では、非常に多くの緑の溢れる様子を見ることができました。
家の前のアプローチにも芝生のスペースが多く取られていました。 団地群の中庭同士が面した箇所、首都の団地内とは思えないほど緑が豊富でした。
団地内の建物と建物の間のスペースもゆったりとられていて、かつ芝生と木々で覆われていました。リスも駆けている環境でした。


マルメ(Malmö)市の様子紹介(第3号)

続いて、マルメ市のBo01地区の様子を紹介します。よく環境都市として紹介されるマルメ市の事例ですが、第3号で「都市内の緑地に景観以外にどのようなことが求められているのかに関して共通してみられるのは、Stormwater流出抑制・管理と鳥や昆虫等の生息地の確保ということです」と述べた、Stormwater流出抑制・管理がどれほど考えられているのか、街並みの様子からわかります。ここでは、前号の事例紹介と合わせて、マルメ市Bo01地区の写真をご覧ください(2012年1月撮影)。
街なかにはこうした開水面がいたるところに配されています
子どもたちの遊び場スペースも兼ねたオープンスペースが広くとられています 開水面があり、芝生の庭が各家に配されています。
このような家の目の前にも開水面がありました。

Stormwaterの排水設備や生息地を通して、エコシステムの機能になんらかの貢献をしているものが、エコロジー的に効果的な(ecologically effective)エリアであると、前章で紹介しました。今回は中庭や屋上緑化などは見られませんでしたが、排水設備や、街なかの開水面(池や溝など、少なくとも年間6か月は水の下にあるエリア)の状況は確認することができました。開水面は、Green Space Factor値1.0と最も高い値のひとつで、エコシステム機能への貢献度が高いとされていることから、街中のいたるところに開水面が配されていることが納得できます。

また、地区の周りには、非常に広いオープンスペースが保たれていました。

後記
今号では、これまでの号で扱ったテーマを振り返り、最新情報や現地の様子などを紹介しました。これまでの取扱いテーマでも結構ですので、コメント、最新情報、間違いへのご指摘、写真の現地の様子へのご感想等を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
マルメ市の様子紹介では、開水面について何枚かの写真を紹介しましたが、例えば、日本の新規開発地区などで、これだけの数の開水面をいたる所に配することは可能なのか。日本では、公園などのレクリエーションのための池のようなものを除いて、マルメ市のような開水面が街中にたくさんあるのはあまり見たことがないように思います。また、Bo01地区は、市の中心部から徒歩で30分ほどの場所に位置していますが、オアスン海峡(Öresund[sv]、Øresund[da]))を挟んで対岸にデンマークを望む海辺と、地区のまわりに配された非常に広いオープンスペースに囲まれた開放感のある街区という印象を持ちました。

次号は・・・
第1号で取り上げた「Stormwater―雨水を浸透させて下水料金割引―」を再び取り上げる予定です。
 
第4号のテーマ

「Green Factor
―敷地の緑地割合を定める制度:ドイツBAF制度―」③(第2、3号補足号)

第4号の内容

1.ベルリンBAF制度最新情報(第2号)
2.マルメ市の様子紹介(第3号)
3.後記



本号で紹介する独語資料の訳、解釈は、ドイツ語翻訳・通訳の黒田容子様にご協力いただきました。ありがとうございました。





 【参考】ベルリン市州
面積:892㎢
人口:3,443,000人
可住地面積*:72.3%
*総面積から林野面積、主要湖沼面積を差し引いた面積を指すため、Forest and woodland, Lakes and waterways, その他の3項目の面積割合を除いた数値を示している。
Berlin in Figures 2010, State Statistical Institute Berlin-Brandenburg【PDF 1.34MB】
*同じ統計指標ではないため、一概に比べられないが、参考のため、日本における可住地面積割合は全国平均32.6%となっており、東京都63.8%をはじめ関東圏では可住地面積割合が高いが、最も低い高知県は16.4%となっている(鳥取県「100の指標からみた鳥取県:平成23年版」3.可住地面積割合より抜粋)。


































1990年に策定された原則を参照しました(The Biotope Area Factor as an Ecological Parameter_英語版【PDF 192KB】)。















































































































 【参考】マルメ市
面積:155.56㎢
人口:302,835人
(可住地面積:不明)
(Statistics Sweden)







滝本の目(都市に住む人の利用価値の高い緑)

これまでBAF制度を紹介していく中で、「都市に求められる緑」について考察を進めてきました。また、そのような緑を得るための制度の実行力として、都市の機能としての緑の価値へ重点を置くことが大切であることを述べてきました。実際に、ベルリンの街並みを見た印象から、その価値の中には、都市に住む人にとっての利用価値も含まれるのではないかと考えました。

ヨーロッパの街並みに、「公園などの緑地を整備した公共空間だけでなく、個人宅にも小さなかたまりでも緑があり、それが、その敷地外の人にも(公の道路や広場から見ることができるという事も含めて)利用でき、かつそれが連続していくことで、街全体に至るところに緑がある」という状況がある旨は、再三記載していますが、住む人も住宅の敷地外の人も、「利用」できること――ここでは、自分の庭でテーブルとイスを出してゆっくりする、住宅街を散歩すると他の人の庭々が作り出す緑の回廊を気持ちよく歩くことができる、街中でも、緑の溢れる木陰のカフェでコーヒーを飲んだり、ランチをとったりくつろげる――というように、都市に住まう人の各々の生活に、うまく取り込まれて、使われていることが、少しずつでも推進されていく理由なのではないでしょうか。それがひいては、そこに住む人が、“自分たちの街をどのようにしたいか”という希望を反映した、実効力と意義のある制度になっていくのではないか、と考えました。

日本でも、最近はおしゃれなカフェ等では、テラス席を用意して、徐々に外のカフェで食事する、お茶をする、という場所が増えてきましたが、まだ、街路樹や木陰でという場所はあまり多くないように思います。街路に着目した場合、国土交通省でも、「道を活用した地域活動の円滑化のためのガイドライン」(平成17年3月)【PDF 776KB】を出していますが、期間が限られたイベントであったり、中には街路樹の下にパラソル・テーブル・椅子を出している例もみられますが、緑と連動した取組みにはなっていないという印象があります。

一概にヨーロッパのカフェ文化に根差したオープンカフェを取り入れるのが良いかどうかは議論の余地がありますが、都市に住まう人々の日常の暮らしに、木陰で休憩する等のちょっとしたスペースが、どこか1か所にかたまりであるのではなく、至るところに、それぞれの人にとってのそのようなスペースがあるのは、「暮らしに根ざしている」点において、都市にとって、都市に住む人にとって、重要ではないかと思います。都市における緑の価値の1つとして、そのような視点も加えて、考察を進めていけたらと思っています。


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