ceis(一般社団法人 環境情報科学センター)  
  欧州の環境への取組み―事務局滝本の目― 2011年7月 第1号








「Stormwater」=
豪雨による雨水?












































インセンティブを与えて、
個人が自分の土地の
浸透性を高める















Stormwater管理は
世界の趨勢


 
 雨水を浸透させて下水料金を安くする!?

皆さん、「Stormwater」(ストームウォーター)という言葉を聞いたことがありますか?「嵐の水」?豪雨による雨水?訳語もまだ定まっていない程、日本では馴染みがない単語です。

日本では、都市においては、雨水といえば、コンクリートの道路の上を流れて、側溝からマンホールに流れ込む、そんなイメージですね。そうです、雨水といえば、rainwaterという単語が一般的ですね。

しかし、ほとんど同じようですが、「Stormwater」には雨水に対する異なる考え方が表れています(右枠内「滝本の目①」をご参照ください)。

「Stormwater」とは、降雨中および直後の敷地内から敷地外の道路等へ流出する雨水を指しますが、日本語での確定した訳はまだありません。ここでは、仮訳として、この意味をあらわすものとして、「流出雨水」と表記します。

このStormwater(流出雨水)に関して、取組みが進んでいる国は、欧州の真ん中、環境先進国と呼ばれて久しいドイツです。その取組みとは端的に言いますと、Stormwater(流出雨水)を、できるだけその土地に浸透させ、下水道に流れる雨水を極力減らすことを狙ったものです。

なぜ、下水道に流れる雨水を減らすのかと言うと、雨水というのは、道路の上を流れてくる間に様々なごみ、ちり等を一緒に運んでしまいますので、そのまま川や海に流すと、大切な川や海が汚染されてしまいます。そのため、雨水も処理場で処理したあとに流さなければなりません。このように、汚れを運んで流出する雨水をStormwaterとして、その量と質を管理しなければならないという考え方がドイツを含め、欧州各国にあります。

日本では、下水と雨水を一緒に流す合流式下水道方式をとっている自治体が多いので、処理場での処理は必須となるのですが、一時に雨が大量に降ると、その処理が追いつかず、未処理下水が河川や海域等に放流(これを雨天時越流水という)されてしまっている場合もあります(国土交通省の合流式下水道改善対策検討委員会(平成13年設置)の実態調査において、この雨天時越流水が放流水域の水質に影響を与えている実態が明らかにされています)。

ドイツの制度では、こうした汚れた流出雨水を減らすことで、川や海の汚染を防ごうとしています。また、それと同時に、汚れた流出雨水を処理する負担が軽減される、これが流出雨水に関する制度のポイントの1つです。

ドイツにおける流出雨水の管理促進制度には、もう1つ、見落とせないポイントがあります。それは、流出雨水を減らす方法として、個人に土地への浸透を推奨している点です。

個人の土地の浸透性を高める


雨水を「浸透」させるために、個人が自宅でできることはなんでしょうか?お庭を緑にする!!!そうです、つまり自宅内の土地をできるだけ、コンクリートで覆われていない自然の状態にすることです。また、自然の状態までいかなくとも、保水性ブロック等の浸透性の高い材質で覆うことも含まれていますので、車や自転車の駐車スペースにも適用できます。

個人がこのような取組みをすることに、下水道料金割引というインセンティブを与えて、浸透性の土地を、街全体に広めていく、これは、街の被覆率という観点からも、非常に重要なポイントです(右枠内「滝本の目②」をご参照ください)。

日本の下水道料金というのは、水を使った分だけそのまま同量が下水に流れているという考え方で、上水道料金から自動的に計算されますので、下水料金のしくみから変えていかねば、個人に対する直接的なメリットは生み出せませんが、土地の被覆改善は、様々な問題と絡み、これからの街づくりにおいても重要なポイントであることから、抜本的にかつ積極的に取り組んでいってよい分野だと思います。

世界の流れを見ると、ドイツでは1970年代頃から制度を採用している都市もありますが、ベルリンでは2000年から制度を開始していますし、ヨーロッパ以外では、アメリカで流出雨水の管理・抑制促進の制度が多くの自治体でとられ、積極的に、この対策がすすめられていますが、制度運用を始めた自治体では、2008年~2009年に下水道料金の課金方法等を変更し、制度を開始しているところも多いことから、日本も世界的な流れのなかで、導入を検討してもよいと思います。

事例の紹介①

それでは、ドイツの流出雨水に関する制度を詳しく紹介します。まず、流出雨水に係る費用を課金するために、下水道の料金体系の変更を行っています。以前の料金体系は、水使用量に基づいて徴収された料金で、公衆衛生費用と流出雨水処理費用の両方をまかなっていました。これは現在の日本の料金体系と同じです。これを、今日では分割された排水料金体系にし、水使用量に基づく公衆衛生処理費用(sanitary disposal fee)と流出雨水処理費用を分け、流出雨水の処理費用の透明化を図っています。2001年現在で、ドイツの49.6%の自治体が、この分割された排水料金体系をもっています。

この料金体系はまた、社会的視点においてもより公平であるとみられています。それは、従来の料金体系では、水の使用量で下水道料金が計算されるからです。分割された料金体系では、屋上緑化などの流出雨水源コントロール対策は、自治体の規則によって割引が得られるため、水使用量に関係なく、料金が決まります。そのため、自治体ごとに異なりますが、公共の下水道に接続していない不動産オーナーは、流出雨水の処理費用を完全に免除される、というしくみになっています。

流出雨水処理費用の額は、不動産における不浸透性面の広さや敷地面積に対する不浸透性面の面積の割合等に基づいて課金され、その額は、1㎡あたり0.20~2.00€強となります。例えば、Dortmund(ドルトムント)市では0.80€/㎡(約89円/㎡)、Dresden(ドレスデン)市では1.15€/㎡(約128円/㎡)など、自治体によって額は異なります。

割引率は、最大で100%まで設けられていますが、多くの自治体では、50%までの割引率をとっています。

事例の紹介②

次にCologne(ケルン)市のStormwater fee discountの事例を紹介します。

割引制度の前提となるStormwater feeの体系から紹介しますと、Stormwater feeは、公共の下水道に接続している不動産に課され、料金は、年間1.10€/㎡(約127円/㎡)です。割引制度はこのStormwater feeに対してなされ、流出係数(Runoff Coefficient)に基づいて算出されます。この制度の中で推奨されている対策は、屋上緑化等の不浸透性面の改善です。割引を得るには、「用地計画」「屋上緑化供給者による当該屋上緑化の有効性を承認する書面の申告書」「Stormwaterの浸透データ」の提出が求められます。

Stormwater fee算出や割引制度において重要となる流出係数は、土地形態ごとに、つまり土地の浸透性の度合いによって決められています。流出係数について、ケルンでは、最低実行目標が定められていませんが、例えば、ケルンのある、North Rhine-Westphalia州の同様の補助金プログラムでは、最低実行目標として、流出係数0.3と定められています。

流出係数 料金の割引率(%)
0.1 90
0.2 80
0.3 70
0.4 60
0.5 50
0.6 40
0.7 30

この土地の浸透に関する、流出係数等については、別の制度にも関わってくることから、次号にて詳しく紹介します。

本号のまとめ

本号では、流出雨水処理費用の割引制度を紹介しました。Stormwaterという聞きなれない単語が示す通り、日本で、日本語で紹介されていることは少ないのですが、大変興味深い制度です。

流出雨水に関して、その費用を別途分割して徴収することで、個人へのインセンティブの付与、都市の不浸透面の減少といった効果と合わせて、流出雨水処理に係る費用の削減に伴い、そこに投入する税金の削減効果も期待でき、多くの効果が予測されます。ぜひとも日本で導入されるよう、情報の収集、導入検討のための議論が巻き起これば良いなぁと思っております。

皆様からも、Stormwater(流出雨水)について、こんな情報がある、こんな動きがある等、情報、ご意見をお待ちしております。今号は第1号ということで、説明が至らない点があったかと存じますが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。次号もぜひお付き合いください。


次号は・・・

土地の浸透性に関連して、ドイツのBAF制度を取り上げる予定です♪

 
第1号のテーマ

「Stormwater
―雨水を浸透させて下水料金割引―」

第1号の内容

 1.雨水を浸透させて下水料金を安くする!?
 2.個人の土地の浸透性を高める
 3.事例の紹介①
 4.事例の紹介②
 5.本号のまとめ
第2号

滝本の目①
(なぜ日本で着目されてこなかったのか―雨水と都市の緑被に対する考え方)

日本では、汚れを運んで流出する雨水の量と質を管理しなければならないという視点をあまり重視していません。スウェーデンの街づくり等に関するコンサルタント会社では、このStormwater管理は、街が機能するためには、非常に重要であるとしていますが、日本にはこのような考え方はありません(下水道行政の中で雨水処理という観点はあります)。この理由、考え方の違いは何なのでしょうか。

日本の下水道行政には、「自然現象による雨水分は公費負担」という言葉があります。
この言葉が表すように、雨水をあくまで自然のものと捉えているように思えます。Stormwater(流出雨水)は、その自然の雨が人工の被覆面を流れることで、汚れを運んでしまう、雨水に着目しています。
日本の捉え方では、降ってきた雨は、その量も質もそのまま受け止め、必要ならば処理をして流すという政策も納得がいきます。一方で、欧州の捉え方を踏まえると、ではその自然の雨が流れる人工の被覆面を減らそうという政策につながってきます。

また、財政面でも、日本は、「雨水公費・汚水私費の原則」で下水道行政を行っており、雨水はあくまで個人がどうにかする問題ではないという捉え方をしています。この考えに基づくと、個人の土地から流れ出る雨水を抑制するよう求めていく、という政策にはつながらないことになります。
考え方の違いについて、ぜひ、このような観点からも考えられるというご意見をいただければ幸いです。

 滝本の目②
(日本での効果!?)


日本でも、雨水を地下に浸透させ、各家庭から流出する量を抑える個人の取組みを推奨する制度として、雨水浸透桝の設置補助が多くの自治体でなされています。しかし、これは被覆の観点には着目されていません。
被覆に着目し、個人へのインセンティブを与えるこのStormwater制度に日本でも着目すべき理由について、ヨーロッパやアメリカよりも高温湿潤な気候をもつ日本としての大きなメリットを下記のように考えます。

・日本の土地は多くが個人の所有であるため、国が緑化を進めるといっても個人の土地までは踏み込めないため、個人にインセンティブを与えるという点で被覆改善の可能性が高まる。
日本の都市は、公園や神社の境内等を除いて、コンクリートに覆われている部分が多く、ヒートアイランド現象が起きています。蒸し暑い夏には不快なだけでなく、熱中症患者が急増し、死者が出るなど深刻な状況になっています。また、夏には局地的集中豪雨が年々その激しさと回数を増し(最近は、ゲリラ豪雨という言葉もよく使われるようになりました)、都市型洪水を多発しております。そのような現象の緩和策としても、街の被覆率の改善、緑の土地を増やすことは大きな影響を及ぼします。

滝本の目③(課題)

日本でこの制度を普及させるには、いくつかの壁があります。滝本の考えるその壁とは、

下水道料金のしくみ

→本文中でも紹介しましたように、料金体系が異なりますが、課金方法の変更は、排出者責任が明確になるメリットがあり、かつ課金方法の変更は他事例でもあり可能 

個人の所有している土地の規模

→土地の面積が小さく、インセンティブが働きにくい。しかし、駐車場等も完全な芝生は不可能でも芝生と浸透性コンクリートなどの組合せも可能なため、浸透性土地面積を増やすことは可能 

雨量がドイツ等と比べて格段に多い
 
→大量の雨が一気に降ると、土の表面等が削られ土砂等も流出してしまう
 
です。克服可能か、他にも壁があるのか、ご意見がございましたら、お願いいたします。
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