実践事例の紹介
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The Good Practice
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広島大学附属福山中・高等学校
 福山市は広島県の最東部に位置する人口約38万人の工業都市。高度経済成長期には公害問題を経験しただけに、環境に対する関心は市民の間で高く、「環境にやさしい都市宣言」をはじめ、環境保全に向けた各種行動計画や実行計画が立てられている。

 広島大学附属福山中・高等学校(以下、本校という。)は、この福山市の東部に位置する。1951年に成立した比較的新しい学校だが、前身から数えると100年以上の歴史を持つ。1962年度から中・高一貫教育を実施しているほか、ベルやチャイムの廃止など、自由・自主の校風を掲げている。
 
1.酸性雨調査のスタートから現在まで

 1994年、中央廃液処理施設の正藤助教授を中心に、「広島大学の附属中学校4校共同で活動できることに取り組もう」と話し合い、広島県という地域にふさわしいテーマを探した。そのとき発案されたのが酸性雨調査である。

 広島県などの中国地方では以前から山中の松が枯れる被害が目立ち、その原因は松くい虫ではないかとされていた。しかし松くい虫だけでは説明できないことも多く、酸性雨や大気汚染そのものの影響の方が大きいという指摘があったため、雨を調査しようということになったわけである。

 酸性雨調査の実施方法などを検討する際、広島大学の森林生態系の専門家である中根周歩教授から多くのアドバイスを受け、環境教育を目的とした酸性雨調査が行われることとなったわけだが、その後現在まで中根教授や研究室の協力・指導が得られており、酸性雨調査を実施していく上での大きな支えとなっている。

 酸性雨の調査キットはpHメータ、雨を集めるレインゴーランド、導電率計の3点で1セットである。これを各校では1セットずつ購入、風向計、風速計、温度計、湿度計とあわせてそろえた。そして測定したところ、pHが4程度の数値を示す結果が得られ、たしかに酸性雨が降っているという実感を持つことになった。

 翌年の1995年、通産省と文部省の共同事業である「ネットワーク利用環境提供事業(通称100校プロジェクト)」のモデル校に選定された本校では、この体験から全国での酸性雨調査を100校プロジェクトに提案・申請し、採用されることになった。100校プロジェクトは、初等中等教育にコンピュータネットワーク(インターネット)を利用・活用する試みとして実施されたものである。

 本校からの酸性雨調査の提案に対し全国から40の学校が応募・参加し、同じ調査キットを使った「酸性雨調査プロジェクト」がスタートした。それと同時に本校はその事務局を勤めることになった。

 全国の参加校が行う酸性雨調査の測定データは「酸性雨調査プロジェクト」のホームページに入力され、誰でもこのデータを活用できる。つまり、これによって測定内容の統一と、観測されたデータの共有がはかられることとなったわけである。

 100校プロジェクトはその後、新100校プロジェクト、Eスクウェア・プロジェクトに引き継がれた。その間「酸性雨調査プロジェクト」も継続されて、2001年度では112校が参加するまでになった。本校はこのなかで、一貫してプロジェクトの事務局あるいは幹事校として中心的な役割を担ってきている。もちろん本校の環境教育の実践としても、「酸性雨調査プロジェクト」と一体となって継続されてきている。
 

2.実践活動内容

 本校では、1990年頃から独自に「課題学習」の教科を設けてきた。生徒が自ら調べたり研究したりする体験を積むことをねらいとする教科で、理科、数学などのいずれかから選択、1時間/週の時間を当てている。別にクラブ活動を行う1時間/週とあわせて、合計2時間/週の「課題学習」は、現在の「総合的学習の時間」のはしりといえよう。

 酸性雨調査は1995年以来、「課題学習」の理科を選択した中学校2年生の生徒が行っている。中・高一貫教育を実施しているなかで、本校ではこの「課題学習」の理科を、環境教育の中心に位置付けている。毎年30〜40人の生徒が理科を選択し、酸性雨調査のメンバーとなっている。

 酸性雨調査の観測の内容は、(1)気温、降水量、(2)風向・風速、(3)雨の酸性度、導電率などである。(1)と(2)は自動的に記録されるものを毎日、あるいは一定期間ごとに生徒が読み取り、コンピュータに入力する。(3)は原則として降雨のたびに行う。

 調査メンバーは、中学2年の1学期にまず、pHなどの測定方法やコンピュータの操作などを学ぶ。コンピュータの操作は、測定結果を酸性雨調査ホームページに接続して入力し、データ送信を行わなければならないので全員の必須項目とされている。ほぼ全員が1学期中に習得できている。

 調査メンバーは3〜5人のグループに分かれ、1週間ごとに交代して観測を行う。最初は教師たちの指導を受けながら行うが、すぐに自分たちだけで測定できるようになる。

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 また、各グループは上記の酸性雨調査とは別に、グループ独自のテーマを設定して調査や研究に取り組む。用意された観測を行うだけでなく、自主的に課題を探してそれを実行する点が「課題学習」の目標でもあるからだ。

 
3.活動の特徴

 本校の酸性雨調査活動にはいくつかの特徴が見られる。1つは、1994年以来という長期にわたって継続した活動であること、2つ目は、インターネットで結ばれた全国の参加校と情報を共有し合っていること、3つ目は、大学の研究室のバックアップが確保されていることである。

 長期間の活動は、ややもすると所期の目的意識が薄らいだり活動自体がマンネリ化したりすることが懸念される。しかし本校の場合、中学2年という固定した学年を主体としているため毎年メンバーが交代し、各メンバーが常に新鮮な意識で関わっていること、また、授業として行っているために全員が真剣に取り組んでいることから、そうした傾向は少ないといえる。

 もちろん、こうした観測活動に見受けられがちな「同じような数値が続くと関心が薄くなる」といった気分が表れることもあるようだ。しかし、次のような独自テーマの調査や研究を行うことで、多様な活動と高い関心を引き出すことに成功している。

  例えば、問題意識をもったテーマについて、インターネットや文献で調査方法を探し出して、自分たちにできる方法を自主的に選び、自動車の排ガスを水に通してpHを調べたり、ほこりのpHを調べたり、酸性雨に関連したさまざまな学習活動を行っている。

 インターネットを活用した学習活動という点については、全国規模の調査に参加していることからデータ登録に対する責任感を醸成し、また各校のデータを主体的に分析するなどの学習効果を生み出している。この「酸性雨調査プロジェクト」のホームページでは、年に数回、時間帯を決めてチャットを開き、参加校同士で意見交換を行っているが、それにも積極的に参加している。

 「酸性雨調査プロジェクト」は、立ち上がりの当初から広島大学の中根教授および中根研究室の協力を受けている。これは、本校の環境教育を進めるうえでも有形無形の支援となっている。現在も不定期ではあるが観測データの監修やアドバイスなどを受け、観測結果のまとめやホームページの改訂時には、中根教授からのコメントなどが寄せられる。

 また、プロジェクトの参加校のメーリングリストには中根教授も加わり、参加者の意見交換を閲覧し、議論の流れを把握してもらっている。そのほか、参加各校から降雨のサンプルを集め、研究室で分析してもらうこともある。環境教育活動に専門家や研究者のバックアップが常時、担保されていることは、学習者や指導者にとって心強いものとなっているようだ。
 
4.活動の成果

 本校の酸性雨調査の活動は、発表会や交流の場を通して、生徒たちにさらにさまざまな活動を生むきっかけを与えている。

 1つには、活動成果の発表の場が与えられる機会があることだ。県内のこどもエコクラブの交流会での発表などのほか、2001年には「こどもエコクラブ アジア太平洋会議」で日本代表として活動結果を発表し、大気汚染問題の解決について世界に訴えた。

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 こうした発表の機会を持つことは、発表内容や方法、表現などの検討と実行を通して、考えを整理する技能や他者に伝えるための技能を磨くという点でも役立っているようだ。

 また、本校はグローブプログラムにも参加しており、インターネット技術を習得した成果から、世界70カ国以上の子どもたちと電子メールを使った交流も行っている。

 1年間を通じて酸性雨調査を経験した生徒たちは、多くの酸性雨データから全国の様子を把握するほか、さまざまな情報を手に入れる。環境教育活動の実体験から得たものとあわせ、生徒たちの意識や態度も変わってきたようだ。それは、この活動で得たものから次の新しい活動につなげていく次のような事例にも現れている。

 例えば、大気の汚れを少なくするためにどうしたらよいかをインターネットで調べるうちに、自動車メーカーなどが排気ガスのクリーン化に取り組んでいることを知り、社会的な努力がなされていることに気づく生徒がいる。また、調査を通じて大気が世界とつながっていることを実感できたという感想を持ち、世界が手を取り合って解決に向かう必要性に意識が向かう生徒もいる。自分の生活を振り返り、環境をよくするために努力することを誓ったり、自分が考えた小さな努力をまわりの人に広げるためのメッセージをホームページに載せる生徒も出てきた。
 
◎広島大学付属福山中・高校のホームページ  http://www.hiroshima-u.ac.jp/Organization/fukuyama/
◎Eスクウェア ホームページ http://www.edu.ipa.go.jp/E-square/
◎『みんなでためす酸性雨調査大作戦』 酸性雨調査プロジェクト研究会編 合同出版 1,500円+税
 
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